ヒルドイドの成分ヘパリン類似物質とは
保湿剤や血行促進の外用薬として人気がある「ヒルドイド」ですが、その主成分は「ヘパリン類似物質」というものです。
ヘパリン類似物質は”ヘパリノイド(Heparinoid)”という保湿成分のことをいい、ヘパリンに似た働きをするため「ヘパリン類似物質」と呼ばれています。
ヘパリンとは私たち人間の体内にある”ムコ多糖類”の一種です。
ムコ多糖類は細胞のまわりで体液などの水分を蓄え、細胞の動きを円滑にし、また細胞や組織の表面を保護する役割をもっています。
潤いのサプリメントで有名なヒアルロン酸や、膝などの間接の痛みに効くといわれているグルコサミンやコンドロイチンもこのムコ多糖類に分類されます。
ヘパリンを含むムコ多糖類の働きによって、私たちの肌は一定の潤いが保たれ、細胞を健康に保つことができるのです。
そんなヘパリンに似せて人工的に作られたのがヒルドイド成分「ヘパリン類似物質」です。
主に豚や牛の臓器を原料として作られており、人間の体内にあるヘパリンと同様の働きをしてくれます。
ヘパリンは抗凝固薬のひとつで、医療現場で血栓を溶かしたり、血栓ができるのを予防するための薬として使われているため、ヘパリン類似物質も同じような働きがあります。
血栓の予防や改善の他、ヒルドイドの有効成分ヘパリン類似物質には皮下血種(青痣等)などを改善させる血行促進の働きもあります。
ですのでヒルドイドを塗ることで皮下の血行をよくすることで肌の新陳代謝が活発になり、細胞の生まれ変わりのサイクルを正常にし、肌荒れやニキビ跡を改善してくれます。
ヒルドイドには抗炎症作用もあるため、筋肉痛や関節痛といった皮下で起こっている炎症を鎮める効果も期待できます。
長年消えないままのケロイドや古い傷跡なども、ヘパリン類似物質が持つ血行促進と線維芽細胞の増殖を抑制する働きによって綺麗に治せることが多いといわれています。
ヒルドイドには傷跡を薄くする効果があると言われるのはそのためです。
線維芽細胞は傷ができるとその傷を治すために増殖し、皮膚を保護する働きがあるのですが、傷が治ったあとも増殖を続けてしまい傷跡が盛り上がって跡になってしまうことがあります。
これがケロイドや肥厚性瘢痕と呼ばれるものです。
ヒルドイドに含まれるヘパリン類似物質はこの線維芽細胞の増殖を抑えてくれる効果があるのです。
そして最もよく知られているヘパリン類似物質の効果は、やはりヒルドイドの強みである「保湿力」です。
ヘパリン類似物質が主成分のヒルドイドの処方の大半が、その保湿力を目的としたものだからです。
ヘパリン類似物質は体内にあるヘパリンと似た成分なので、薬剤に起こりがちな副作用が極めて起こりにくいといわれています。
もちろん0%ではありませんが、他の外用薬と比べればほとんど起きないと言ってもいいほどでしょう。
ヘパリン類似物質は水との間に親和性を持つ親水基を多く持つという特性があります。
そのためヒルドイドは水分を保つ力が強く、細胞の乾燥を防ぐことができます。
皮膚が乾燥することが原因で起こる炎症や痒みなどを改善することができるため、ヒルドイドには副作用が起こりにくい特性もあり、全身スキンケアの保湿剤としてヒルドイドを使っている方も多いです。
普段よく目にする保湿剤にはいろいろ種類がありますが、その成分や使用目的などは異なります。
ヒルドイドと比較されることが多いワセリンですが、皮膚の保護に使われるワセリンは、皮膚の表面を油膜で多い、角質層の水分が逃げることを防ぎます。
ワセリン自体に水分を保持する力はなく、あくまでフタのような役割に使われます。
化粧品でよく聞くセラミドやコラーゲンは、皮膚表面の角質層で水分を保持し、皮膚を保護する働きがあります。
外側からきちんと補充を続けることができれば効果的です。
ヒアルロン酸は分子量に左右されますが、これも主に角質層で持続的に水分を保持する働きがあります。
ヘパリン類似物質はこれらの保湿剤と異なり、肌の角質層よりさらに奥にある基底層と呼ばれる層に働きかけて細胞を修復し、水分を保つことができるようにする働きがあります。
ヘパリン類似物質の特徴はその浸透力の高さであり、市販の保湿剤と比較すると皮膚の内部から乾燥を改善させることができます。
様々な使用用途があるヒルドイドの成分ヘパリン類似物質ですが、元となっているヘパリンの抗凝固剤としての働きのせいで出血している場所に使用すると血が止まらなくなるというデメリットもあります。
出血が続くと重篤な状態になる恐れのある先天性の出血性疾患を持つ方などはヘパリン類似物質の使用は避けてください。